太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男-(2011)

In: ドラマ|戦争

20 2月 2011

久しぶりに観た日本人監督の戦争映画は、太平洋戦争末期のサイパン島で起きた事実を淡々と物語る作品で、史実に基づく原作の映画化は戦闘シーンはあるものの捕虜収容所に簡単に侵入出来てしまうなどリアリティに欠けてても仕方がないと感じさせられる作品だった。
原作者「ドン・ジョーンズ」は敵として戦った元アメリカ兵で、私は彼の書いた『タッポーチョ「敵ながら天晴」大場隊の勇戦512日』は未読だが、恐らく米国側から見た日本人の精神や直情さを描いたものではないかと思われるが、本作の「平山秀幸」監督は主人公の大場栄大尉を決して英雄として描いてはいないし、一人の人間として成すべきことを成した人として描いている。
戦争映画として観るには物足りなさを感じるが、「日本人はなぜ自殺するのか?」という米国司令官の問いに対する答えとして、日本を知る米国大尉は将棋の駒に例えた説明で
「チェスの駒は色が白黒別れていて敵味方が混同しないが、将棋の駒は敵・味方が同じ形をしていて、その向きだけで相手を判別する。例え敵の駒でも、向きが変わるだけで味方の駒となり、敵から取った駒は自分の駒として利用する事が出来る。日本人もこれと同じだが、日本人は主君(天皇)に忠誠を誓うので、昨日まで敵であっても、一旦降伏したなら新たな主君として忠誠を誓わなければならず、元の主君に刃向う訳にはいかないので降伏する前に自殺するのだ。」
という会話には妙に納得させられた。
ただ、邦題の“フォックスと呼ばれた男”という割には素早さや狡猾さは感じられず、この辺りが映画としての面白さを軽減しているのだろう。
この作品は、8割が日本側からの軍人や民間人を描いているので、もう少し米国側からの視点で彼らの感情も描いた方が良かったと感じる作品だった。
主演の「竹野内豊」は少しぎこちない滑舌だったが、逆にリアルに感じてしまったのは、演技としての滑舌だったのだろう。
戦闘シーンのリアルさや残虐性は「プライベート・ライアン(1998)」や「シン・レッド・ライン(1998)」には遠く及びませんが、これはこれで日本人なら観ておいても良い作品なのではないかと思います。

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